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地球温暖化と気候変動

クールスポット調査報告書(2015年)​
鶴ヶ島市内一斉気温調査結果報告

はじめに
今回の調査は、昨年に引き続き2 回目の調査である。
昨年は、平成26 年8 月28 日に実施したが、天候は曇り、平均気温23.1 度と低かったた
め、再度、9 月4 日に実施した。しかし、9 月4 日も曇りとなり、観測地点平均気温は24.3
度と直射日光が射さない中での調査となった。
今回の調査は、昨年の状況・経過を踏まえ、調査日を昨年より早め7 月30 日とし、調査
日の3 日前の鶴ヶ島市週間天気予報で実施の可否を判断する方式とした。
7 月30 日に実施する予定であったが、30日の鶴ヶ島市の天気予報が、最高気温30 度、
曇と急に変わったため、1週間延期することを決定し8 月6 日に実施した。
調査には多くの市民の皆さんが参加されることが望ましいことから、7 月の「広報つるが
しま」に調査員の募集を掲載し、調査員に広く市民の参加を求め実施した。
1.調査目的
今年の真夏の気温は、全国各地で最高気温が更新されるなど猛暑日が続いた。
また、熱中症死亡者数の急増、集中豪雨の多発が連日報道され、埼玉県でも熊谷市は群
馬県の館林市と並んで暑い都市としてニュース報道の常連となるなど、私達の住んでいる
周辺地域のヒートアイランド現象は、日常的な身近な存在となっている。
そのため、次の目的で鶴ヶ島市の気温を測定し、自分達の住んでいる地域の実態を知る
こととした。
◯ 鶴ヶ島市全体の気温はどのような分布状況になっているか知りたい
◯ 市内には市民の森、公園、神社、池など多くの緑地や涼しい場所があるので、気温を
測ることで市内のクールスポットを再認識したい。
◯ 散歩コースの選定など市民生活に役立つ情報を提供したい。
◯ 観測データを埼玉県環境科学国際センターに送り、気温分布地図を作製・公開し、ま
ちづくり基礎資料として今後に生かしていきたい。
◯ 多くの市民が関わることで、“ 気温” を通して環境を考える機会としたい。
2.調査方法
(1) 観測地点を125ヶ所設定
① 縦:500m、横:360mの1 ブロック(1 ブロック面積18 ㌶)で鶴ヶ島市全体を分
割し123ブロックを設定した。
② ブロック内の市の面積が半分以下の場所は欠番とした。
③ ブロック内に森、公園、神社、池等の樹林地がある場合、原則として同一ブロック
内に樹林地以外の観測地点を設定した。(1 ブロック内複数観測地点)

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

(2) 観測参加団体の内訳
 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

(3) 観測地点地面の設定方法
① 各市民センター等の公共施設、カローレ(学童保育室)は観測場所を現建物出入口
付近とし、地面は原則アスファルトとした。
② 森、公園、神社、池等は樹林地とした。
③ 上記以外の観測地点はその場所の周辺状況より畑、山林等が半分以上の場合は、
草地とし、宅地等が半分以上の場合はアスファルトとした。不明の場合は、グー
グルマップの写真地図で状況を確認した。
(4) 使用温度計
観測地点数が多いため、昨年に引き続き100円ショップのアルコール温度計で測定
したが、事前チェックで不備なものは除外して使用した。
(5) 測定方法
地面より1.2~1.5m の高さの風通しのよい場所で日光が直接あたらないようにして
測定した。
3.調査結果データ
(1) 観測日時: 平成27 年8 月6 日(木)13 時30 分~14 時の時間帯
(2) 観測地点数: 鶴ヶ島市内125ヶ所
(3) 観測者数: 95 人
(4) 参加団体数: 30 団体
(5) 平均気温: 37.6 度
(6) 最高気温: 42.0 度
(7) 最低気温: 30.5 度
(8) (6)-(7) : 11.5 度
(9) 樹林地、公園、神社、池等(22 ヶ所)の平均気温: 34.8 度
(10) (9)以外の平均気温(103 ヶ所) : 38.2 度
(11) (10)-(9) : 3.4 度
(12) 最高・最低気温場所
① 最高気温(42.0 度)場所: 共栄ニュータウン自治会集会場
学童保育なかよし
② 最低気温(30.5 度)場所: 6 号市民の森(高倉の森・水辺)
4.調査結果概要   <表2> 参照
(1) 125ヶ所の平均気温は37.6 度となった。この気温の高さは、近年の鶴ヶ島市では最
も高い水準であり、鶴ヶ島市の猛暑日の実態を計測することができた。
なお、当日の埼玉県熊谷、鳩山の最高気温は37.9 度、37.8 度であった。

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

(2) 40 度以上の場所は14 ヶ所あった。
測定場所は日陰、または日陰を作って測定したが、直射日光の炎天下では40 度半
ば近くになり、その場所に長くいれば熱中症になるなど人体にとって危険な気温であ
った。
(3) 一方、35 度以下の場所は17 ヶ所あった。ほとんどが、森、公園、神社、池等の樹
林地・緑地や水辺がある所であった。
(4) 地面別の気温の差をみると、樹林地はアスファルトに比べ3.8 度も低い結果となって
いた。
(5) 昨年の調査結果(平均気温24.3 度)と今年の結果(平均気温37.6 度)を比べると、
13.3 度の違いがあり一概にはいえないが、全体的には市内の気温分布は昨年と同じ
ような傾向になっていた。(昨年も今年も測定時間帯前後の気圧の変化がなく、無風
状態での観測であった。)
<地図2 気温分布表(2015年8 月6 日)>
<地図3 気温分布表(2014年8 月28 日)> 参照
(6) 富士見、下新田、脚折町地区などの一部で気温の低いところは、市民の森、神社、
池、公園、緑道等の存在によるものと考えられる。
(7) 観測地点別に平均気温との差を棒グラフにしたのが<地図4 地点別気温分布表>
である。
(8) 鶴ヶ島市の航空写真に重ねてみると、平均気温の高いところは殆んど建物のある市
街地であり、平均気温の低いところは、樹林地など緑の濃いところであることがわか
る。
<地図5 航空写真による地点別気温分布表> 参照
(9) 市内の気温分布を地区(大字)別にみたのが<地図6 地区(大字)別気温分布表>
である。
地区別の平均気温が36 度台と他地区より低かったのは高倉、町屋、太田ヶ谷であ
る。この低い理由は、これらの地区は農村地帯、樹林地、河川など緑地や水辺が多く
存在していることによる。
(10) 42 度の最高気温場所であった共栄ニュータウン自治会集会場、学童保育なかよし
クラブや41 度以上あった杉下小交差点、学童保育ありんこクラブ、南市民センター、
脚折町の交差点などは気温が高かったが、それは2015年8月6 日の埼玉県、関東地
区、日本全体の気象の現状がそのまま現れている結果であると思われる。
(11) 都市部の気温が周辺の気温より高くなるヒートアイランド現象は全国各地で大き
な課題となっている。鶴ヶ島市も都市化の波の中にあり、気温の上昇は避けられない
現状にあるが、市内にある森、樹林地、農地、草地、神社などの緑地と飯盛川、大谷
川などの河川による水辺は、クールアイランドを形成しており、それによる冷気の滲
み出しが私達に涼しさを提供するとともに周辺の気温を引き下げているといえる。

 
 
 
 
 
 
 
 
 
(12) 今回の調査で最も気温が低かった場所は、高倉市民の森の飯盛川沿いの場所である。
気温は30.5 度と今回観測した最高気温42 度の場所と比べると11.5 度も低かった。
低かった理由は、高倉市民の森は8 ㌶の大規模の森で樹林が密生し高層の樹冠に覆
われている場所にあること、また、飯盛川が近くを流れており、水辺の影響が考えら
れた。
そこで8 月9 日、物質の表面温度を計測できるサーモグラフィーで樹間と飯盛川を
測定した結果、次のことが判明した。
① 木は地下から絶えず養分とともに水分を吸収し、葉より水蒸気を大気中に蒸発さ
せている(蒸散効果)ので、木の表面温度は周辺より10 度ほど低くなっていること。
​<表3>


 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
② 森から飯盛川へ流れている湧き水の表面温度は18.5 度と非常に低く、水辺の存在は、
気温への影響が大きいこと。<表4>
(13) 水辺が気温に与える影響はどのようになっているのかを知るため、8 月8・9 日、
飯盛川15 ヶ所の気温を測定した。その結果、
① 高倉市民の森内に流れる岸辺は自然の土の護岸であり水面からの距離も近く、気
温は30 度から34 度であった。
② 飯盛川は町中に入っても水温は26 度台と低いが、水面からの距離が遠くなり、
コンクリート護岸の表面温度は60 度近くになり、気温は周辺の観測結果と変わ
らなかった。
<地図7 飯盛川沿いの観測地点>
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

<表5 飯盛川沿いの観測地点結果> 参照
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

(14) 昨年の調査結果から、国道407号線沿いの気温が高く、道路による気温への影響が
考えられたので今年の調査では407号線沿いの観測地点を増やし測定した。
しかしながら、明確な気温差はなかった。
(15) 国道407号線の道路をサーモグラフィーで計測した結果、次のことが判明した。
① アスファルトの表面温度と土の道路地面の表面温度(50 度台)とでは温度差はな
かった。
② 国道407 号線の表面温度(45 度)は国道の側道の表面温度(55 度)より10 度
ほど低かったのでその理由を関係機関に確認した結果、国道は浸透性の素材でで
きているが、側道は排水口に水が流れるような素材でできており、素材の違いが
温度差となっている。
(16) 街路樹や草地のサーモグラフィー測定結果
① 道路に街路樹の木陰がたくさんある所と木陰が少ない所での道路表面温度は11
度も差があり、街路樹の量的木陰効果は大きいことがわかる。
<表6 街路樹の木陰による道路表面温度(サーモグラフィー写真)>
② 土面道路と草地の表面温度差は8 度あった。草地の気温への影響もかなりあるこ
とがわかる。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

< 表7 土面道路と草地の表面温度(サーモグラフィー写真)>
5.クールスポット場所
今回の調査結果より推奨する鶴ヶ島市内のクールスポット場所は、森・樹林地+水辺の
相乗効果がある次の場所である。
◯ 高倉市民の森の飯盛川沿いの小路
◯ 運動公園自然観察の森内の大谷川沿いの小路
◯ 藤金市民の森の大谷川沿いの小路
<地図8 鶴ヶ島のおすすめクールスポット地点3 ヶ所> 参照
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

なお、上記以外で測定気温35 度以下の周辺より涼しく過ごせる場所は以下のとおり。
・富士見緑地通り・下新田市民の森・白鬚神社・雷電池
・高倉屋敷林・高倉日枝神社・ハーモニー前庭・池尻池

地区別の平均気温が36 度台と他地区より低かったのは高倉、町屋、太田ヶ谷であ
・新所沢変電所北側道路・ブロックNO.84 -2 ・逆木池
・ブロックNO. 101-2 ・ブロックNO.116 ・第1 号市民の森
6.調査成果
(1) 今回の調査に参加された観測者数は95人であり、市民、市民活動団体、事業者及び
市役所など多数の皆さんの協力のもと市民協働事業として125ヶ所の観測地点を調
査することができた。
(2) 樹林地や水辺等の「自然空間」は自然が持つ安らぎ・爽やかさ等を常に私達に提供
してくれる場所であるが、それらの空間は夏場における気温を下げる機能・効果が非
常に高いことを観測結果として再確認できた。
(3) 調査結果を今後の鶴ヶ島市のまちづくりに活かす基礎資料として公表できた。
7.今後の取組
平成26 年、27 年の取り組み経過を踏まえ、次年度以降は市内にあるクールアイラン
ドの現状を分析するとともに、新たなクールアイランド場所を特定していきたい。
8.その他

(1) 今回の調査は、平成26 年、27 年の鶴ヶ島市「市民提案による協働事業」として実施
した。
(2) 気温分布表は、昨年に引き続き「埼玉県環境科学国際センター」の全面的な協力によ
り作成することができた。
(3) サーモグラフィー写真は東洋大学小瀬教授に協力いただいた。
以上
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